『アンナ・カレーニナ』をゆっくり読む 8
Неприятнее всего была та первая минута, когда он, вернувшись из театра, весёлым и довольный, с огромною грушей для жены в руке, не нашёл жены в гостиной; к удивлению, не нашёл её и в кабинете и, наканец, увидал её в спальне с несчастною, открывшею все, запиской в руке.
何よりも不愉快だったのはその最初の1分間だった。彼が妻のための大きな梨を手に持ち、劇場から楽しく満足した気持ちで帰ってくると、客間に妻を見つけることはできなかった。驚いたことに、書斎でも見つけることは出来ず、最終的に彼は寝室で、不幸な全てを明らかにしている手紙を手に持った彼女を見たのだった。
自分の翻訳能力が低く、日本語の文章は3文くらいになっているのですが、ロシア語原文だとこれが1文で表現されています。なにかのメディアで、「トルストイの文章はすごく説明的だ」、と言われているのを聞いたのですが(残念ながら誰がどこで言っていたのか忘れてしまったので、思い出すまで待つとしましょう)、本当にその通りだと思います。つまり、トルストイの文章は、「こういうことがありました。なぜならこれはこういうことだからです。」というようなことをちゃんと説明してくれる文章ということです。「こうこう、こういう行動をして、最終的にこうなりました」とちゃんと説明してくれる分、文章も長くなります。ただ、入り組んだ書き方をしないので、わかりやすいと私は感じます。個人的にはゴーゴリやドストエフスキーはトルストイの文章より難解に感じるのですが、皆さんどうなのでしょうか。
ここで、オブロンスキーは3つの部屋を進むわけですが、いつもは客間か書斎に妻がいるという習慣が一緒に表現されているのはすごいですね。普段は夫が帰ってくるまで客間で待っているドリー(オブロンスキーの妻)はすごく偉いと現代に生きる私は思います。
それにしても、お土産が梨というのは可愛らしいですね。ロシアだと梨(груша)は西洋梨を指します。ちなみに、日本のような丸い梨はアジア梨(азиатские груши)と表すようです。
- 現在地 第1部第1節
オブロンスキーが自分の失態を思い出す
ロシア語原文はЛев Толстой «Анна Каренина»(Издательство «Э», 2017,p28)から引用
日本語訳は筆者が行っています(翻訳の精度が低いので、誤訳等ありましたらご指摘ください。助かります)