『アンナ・カレーニナ』をゆっくり読む,  読書日記

『アンナ・カレーニナ』をゆっくり読む 5

Да, да, как это было? – думал он вспоминая сон.

「ああ、ああ、どんなだっただろう?」彼は夢を思い出しながら考えた。

 言い争いから三日目の朝に起きたオブロンスキー。彼の夢は、知り合いがダルムシュタットで昼ご飯をご馳走してくれるものでした。

 「ダルムシュタット?どこ?」と、最初に読んだ時は思ったのですが、これはドイツの都市の名前だそうです。「日本にいると、夢でヨーロッパの都市が出てくることはあまりないけれど、ロシアはヨーロッパに近いからドイツの都市名が出てくるんだなぁ」と謎に感心したことを覚えています。

 さて、彼の浮気で家の中は大変なことになっているにも関わらず、オブロンスキーの寝起きは呑気なものです。夢の内容を幸せそうに「ああ、よかったなぁ、よかったなぁ。(Да, хорошо было, очень хорошо)」と思い出している描写は、どこか憎み切れない彼の人間性といいますか、キャラクターを表していると思います。

 小説の最初にオブロンスキーが楽しそうな夢を見ていますが、『アンナ・カレーニナ』では夢は大きな意味を持ってきます。小説が進むとアンナが悪夢にうなされるシーンがでてきますが、このオブロンスキーの夢は、「後々、夢という小道具がこの小説の中で重要な意味を持ってきますよ」ということを示すフックになっているのかもしれません。

  • 現在地 第1部第1節

オブロンスキーの浮気が発覚してオブロンスキー家は大混乱だが、素晴らしい夢を見て、幸せそうにそれを思い出すオブロンスキー

PAGE TOP