『アンナ・カレーニナ』をゆっくり読む,  読書日記

『アンナ・カレーニナ』をゆっくり読む 13

 前回、アンナがオブロンスキーのところへ遊びに来るという重要情報をさらっと流してしまいましたが、今回はそこに少し触れたいと思います。

 – Слова Богу, – сказал Матвей, этим ответом показывая, что он понимает так же, как и барин, значение этого приезда, то есть что Анна Аркадьевна, любимая сестра Степан Аркадьича, может содействовать примерению мужа с женой.

「神様の思し召しで」その受け答えで彼が主人と同じようにその来訪を理解したことを示しながら、マトヴェイは言いました。つまり、アンナ・アルカーヂエヴナ、ステパン・アルカーヂイチのお気に入りの妹である彼女であれば、夫と妻の和解を取り持ってくれるかもしれないということを理解したのでした。

 さて、小説の題名になっている「アンナ」はオブロンスキーの妹であることがわかりました。しかし、実際のアンナが出てくるのはもっと後になります。

 この部分を今回読んだ時に、オブロンスキーという人物はこの小説でやはり最初に出てこなければならなかったということを私は理解したのでした。

 この小説は、大枠で考えると2人の人物それぞれの物語から成り立ちます。片方はアンナの物語、片方はリョービンの物語です。2人の物語は筋の上ではほとんど交わりませんが、構造上は対比構造となっており、影響し合います。この主要人物2人のハブとして機能するのが、オブロンスキーという人物なのです。

 オブロンスキーはアンナの実兄であり、リョービンの学生時代からの親友です。また、小説上に登場する主要な人物の大半と交流を持っています。つまり、オブロンスキーを追えば、通常は決して交わることの無いアンナとリョービンの2人に読者は会うことができるのです。

 また、オブロンスキーの妻であるドリーはリョービンと結婚することになるキティの姉であり、アンナとの交流もあることから、後々ドリーとキティ、ドリーとアンナの話も小説内に出てきます。

 つまり、オブロンスキー家の妻と夫という2人は、小説内の複数の人物が交わる場としての役割を持っていることになります。その上でオブロンスキーの人物像を見てみると、誰からも好かれ、社交的な性格のオブロンスキーは、複数の登場人物と関係をもっており、時には人と人を繋げるという役割にまさに適任。今まで、『アンナ・カレーニナ』なのに、どうしてオブロンスキーという人物から小説が始まるのだろうと思っていたのですが、自分の中で納得できる形で言語化することができました。他の小説でも、同じように誰がこの小説の「ハブ」として機能しているのか考えてみると面白いかもしれません。

ロシア語原文はЛев Толстой «Анна Каренина»,(Издательство «Э», 2017,p31)から引用

日本語訳は筆者が行っています(翻訳の精度が低いので、誤訳等ありましたらご指摘ください。助かります)

  • 現在地 第1部第2節

オブロンスキーはアンナの兄

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