『アンナ・カレーニナ』をゆっくり読む,  読書日記

『アンナ・カレーニナ』をゆっくり読む 12

オブロンスキー家の従僕であるマトヴェイについて前回では書きましたが、今回も引き続きマトヴェイの話です。

このマトヴェイ、オブロンスキーとの会話を読んでいると、オブロンスキーの質問に対して、端的に必要最小限の言葉で答える人物であることに今回気づきました。結構、つっけんどんなイメージがある登場人物でしたが、目の表情で主人であるオブロンスキーに感情を伝えたり、オブロンスキーの気持ちをその言葉と表情から読み取ったりと、すごく有能な従僕です。

例えば、オブロンスキー家にオブロンスキーの妹のアンナが遊びに来ることが判明した後の会話は、以下のようなものです。

– Один или с супругом? – спросил Матвей.

 Степан Аркадьич не мог говорить, так как цирюльник занят был верхней губой, и поднял один палец. Матвей в зеркало кивнул головой.

 – Один. Наверху приготовить?

 – Дарье Александровне доложи, где прикажут.

 – Дарье Александровне? – как бы с сомнением повторил Матвей.

 – Да, доложи. И вот возьми телеграмму, передай, что они скажут.

 «Попробовать хотите», понял Матвей, но он сказал только:

 – Слушаю-с.

「1人、それとも旦那も一緒に?」マトヴェイは質問しました。

ステパン・アルカーヂイチは話せませんでした。というのも、理髪師が上唇に取り掛かっていたからです。彼は指を一本立てました。マトヴェイはガラス越しに頷きました。

「1人ですね。上の部屋を準備しますか?」

「ダリヤ・アレクサンドロヴナ(オブロンスキーの妻)にどこを準備するか聞いてくれ」

「ダリヤ様に?」

「ああ、聞いてくれ。ほら、電信を持っていけ、彼女がなんて言ったかを伝えてくれ」

「試してみる気だな」マトヴェイは理解しましたが、一言。「承りました」

端的な言葉での受け答えも、なるほど、マトヴェイの優秀さを表しているわけです。しかも、必要なことはちゃんと質問をする。言葉が多くなるのは、冗談を言うときですが、それもしつこくありません。(大変な状況に置かれている主人に対する気遣いだと思うと、やはり優秀です)

しかし、引用した部分にはないですが、彼はずっとジャケットのポケットに手を突っ込んでいます。「ずっとジャケットのポケットに両手を突っ込んでいるのはどうなの?」「主人の前で、それは失礼じゃないの?」という疑問が湧いてきてしまいます。この時代の常識はわからないですが、ちょっとかっこつけた性格なのは確かなのではないでしょうか。しかし、言葉少なで、しかも両手をジャケットに突っ込んでいる従僕と言うのは、(しかも優秀)中々に魅力的と言うか、今風に言うとキャラが立ちすぎているんじゃないの、と思ってしまいます。

ロシア語原文はЛев Толстой «Анна Каренина»,(Издательство «Э», 2017,p31)から引用

日本語訳は筆者が行っています(翻訳の精度が低いので、誤訳等ありましたらご指摘ください。助かります)

  • 現在地 第1部第2節

マトヴェイは優秀

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